前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
【御堂家・茶室にて】
御堂家。
只今の天気模様、天気雨。
茶筅(ちゃせん)で茶を立てている妻の横顔を眺めていた源二は、いつ見つめても絵に描いたように美しい女性だと恍惚に綻んでいた。
妻の一子と出逢ったのは自分が24の時である。
彼女はまだ14だった。
父が連れてきた見合い相手には驚愕したものだ。
十も歳の差がある、まだ少女を相手として連れて来たのだから。
ロリとまではいかないものの(いや思いたくない)、相手は中学生。
犯罪に片足を入れているような気がしてならなかった。
しかし、父の命令は絶対だったため、結婚前提のお付き合いを始めたあの日。
恋に落ちるまで時間はかかったが、互いに尊重して将来を誓い合ったあの日々が懐かしい。
彼女にとって自分は親父だったろうに、「何処までもついて行きます」と言ってくれた時の健気さには感銘を受けたものだ。
子供も授かることができ、家庭としては申し分なかった。
父が娘の誕生に憤慨していたこともあったが、自分は娘を授かって心底よかったと思っている。
抹茶の入った茶碗を目の前に置いてくる一子に、「随分月日が経ったな」と一笑する。
「ええ。本当に」いろんなことがありましたけれど、今はとても幸せです。一子は目尻を和らげた。
「次は玲が幸せになる番ですね」
彼女が言った直後、夫妻は重々しく溜息をつく。
娘のことを思い出すと溜息しか出ないのである。
何故か? 娘がまた一段と雄々しくなったからである。
源二は娘の容姿を見た時の衝撃を忘れることが出来ない。帰ってきたら娘が短髪になっているのだから。
どこぞの美少年が我が家に転がり込んでいるのかと思った。
唯一乙女らしい長い髪をバッサバサに切ってしまった娘の心境が読めない。
本当に男にでもなりたいと思っているのではないだろうか、そう思わざるを得ないほど容姿が美少年化した。女の子なのに!
嗚呼、娘が彼女を連れてでも来たらっ……、いやそれはない。彼女を作る説はないと信じている!
なにより手中に希望があるのだ。