前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
「はい。おかげさまで落ち着き始めています。皆様、とても良くしてくださって」
「なら良かった。ところで空くん。ご両親に連絡は取れるかな? 是非ともまた食事をしたいと思っているのだが。親睦を深めたくてね」
「お食事ですか?」それは両親も喜ぶと思います。
満面の笑みを浮かべた空は軽く言葉を交わした後、早速連絡してくると二人に頭を下げて茶室を退室する。これで少しは娘との繋がりが深まると良いのだが。
揃って茶を啜っていると、「とーよーふーく」何処からともなく娘の声が。噂をすればなんとやらである。
程なくして、「センッパイ!」なんで電話中にあんなことしたんっすか、恥ずかしかったでしょう! と怒声が聞こえてきた。
そろーっと障子を開けて外を見やれば、庭園を挟んで向こうの縁側に娘と彼の姿が。
眉根をつり上げる婚約者にぶーっと脹れている娘は、
「先に君と会話していたのは僕なのに」
勝手に内線電話に出たり、両親の下に行ったりするから、と悪びれも鳴く鼻を鳴らしている。
風呂あがりらしく娘は頭からタオルをかぶっていた。
それを取ると見事が短髪が右に左に跳ねている。
嗚呼、見れば見るほど男の子。娘なのに。愛娘なのに。
娘がナニをして欲しいのか分かっているらしく、「ったくもう」座ってください、彼が娘を縁側に座らせた。
そしてタオルを受け取ると、髪をわしゃわしゃっと拭き始める。
徐々に娘の機嫌が上昇した。
楽チンだと一笑を零している。
「髪が短くなったから乾きが早い。切って正解だったな」
「ご両親に嘆かれていたことを忘れたんっすか? これくらいの長さなら自分で拭けるでしょうに。わざわざ俺に拭かせようとして」