前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



と、俺はさと子ちゃんに腕を引っ張られる。


よろめく俺に対しさと子ちゃんは早く体育館に行きましょうと急かしてきた。


楽しそうな出店に目もくれず、グイグイ腕を引いてくる。

早く座ってゆっくりパンフレットを読みたいんだな。

 
苦笑を零して、彼女の隣を歩く。体育館までは迷うことなく行くことができそうだ。

あっちこっちに立て札が立てられているから。

それに添っていけばすぐ体育館には辿り着けるだろう。


「さと子ちゃんは今、どんなお芝居をしているの?」


俺は劇団には入っているさと子ちゃんに話題を振った。

「まだ役はもらえないんです」

なにせ新人なので…、今は舞台裏で補佐をしながら役者の卵として勉強しているとさと子ちゃんは教えてくれる。

そっか、舞台の世界も厳しいんだな。


「役をもらえたら教えてよ。観に行くからさ」

「はい、ありがとうございます!
それに今日もお誘い頂けて、とても嬉しかったです。本当にありがとうございます。
お話を頂戴した時は、嬉しくて、またヘマをやっちゃいました。障子を破っちゃったんです」


てへ、失敗失敗。

笑うさと子ちゃんだけど、それは笑い事じゃないような……。
 

苦笑いを零して、古いレンガ校舎を過ぎり体育館に向かう。

体育館前も人で賑わっていた。

チケットと交換し手渡されるお茶やジュースを配っている女の子達が足りないだの、家庭科室に持って来てだの、忙しく声掛けをしている。


「此処やなー!」


それに混じって何処からともなくテンションの高い声が聞こえた。

並ぼうとしていた俺達はつい足を止めてそっちに目を向けた。
 

するとそこには学ランを着た男子学生が、

「此処が華の乙女学院なんやな!」

テンションアゲアゲにして握り拳を作っている。

側らで恥ずかしいだろ、少しはトーンを落とせとツッコミを入れている男子学生が。


連れであろう彼も同じ学ランを身に纏っている。


あれ、片割れは見覚えがあるような。


「なんやねん花畑。念願の乙女花園にやってきたんやで。女子校に入れるチャンスなんて滅多にないや、もっと喜べ!」

「所沢(ところざわ)。お前の誘いだからヤーな予感はしていたんだよな。マージ最悪。お前ナンパ目的で俺を呼んだだろ?」

「一人より二人の方が心強いで? さっ、まずはどの子にしようか」
 
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