前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
眉根を下げて見知らぬ相手を心配していた俺だけど、ふとじわりじわりと込み上げてくる痛みに違和感を覚えて視線を流す。
「ゲッ」俺は口元を引き攣らせた。両足がセットに挟まってらぁ。
無我夢中で御堂先輩を引き摺り上げたせいか、自分の足に気遣う余裕がなかった。
おかげさまでトホホ、自分の足が逃げ遅れてしまい無残な結果に。だから足が痛いのか。あーあ、やっちまった。
幸いにも挟まっているのは膝から下の部分。どうにか自力で抜けそう。
「君、無理して動くな。今、セットを持ち上げるから」
逸早く俺の異変に気付いたのは、例の貴族主人公さんだ。
おおっ、近くで見ると女子が発狂しそうな美形っぷり。
一度そのイケた顔、爆発しちまえばいいのに!
彼は手の空いている部員にセットを持つよう命じた。
それにより、俺の足は無事にセットの下から救助される。
痺れるような痛みはあるけど、それだけに止まっている。打撲程度で済んだようだ。
いやはや、すみません。
部外者が余計なことに首を突っ込んだ挙句、自分が部員の皆様の手を借りてしまうなんて。
反省はしています、反省は。
けれど後悔はしていないんです。大変申し訳ないことに。
心中で詫びながら俺は立ち上がろうと足腰に力を入れる。かくんと尻餅をついてしまったのは直後のことだ。
あ、あれ? 足に力が入らない……痺れているせい、か?
ほら、足が痺れてしまったら上手く立てないじゃん? あれと似た現象が襲ってきているんだけど。
「失礼するよ」
スラックスを捲くり、足の状態を診てくる貴族主人公さんが眉根を寄せる。
これは医務室に行くべきだと大袈裟な診断を下してきた。
単に打撲しただけなのに!
「だ、大丈夫ですよ。すぐ立てますから。お騒がせしました」
「打撲を舐めてはいけないよ。度合いによっては暫く松葉杖生活だぞ? あのセットは本当に危険視する重さなんだ。肩を貸そう。一緒に医務室に来てくれ」
「立てるかい?」俺の体を気遣いながら、彼が俺の腕を自分の肩に回し立たせてくれる。
まだ痺れたような感覚があるゆえ、大きくよろめいてしまったけれど自力で直立できそうだ。
大丈夫だと答え、出しゃばってすみません、と彼に謝罪する。
「君は一体……」
何者だと眼を飛ばしてくる彼に視線を返し、
「大切な人が無茶をしたから」
つい俺も無茶したのだと御堂先輩に視線を投げる。