前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
淳蔵は空を連れて場所を移動する。
何処に連れて行こうというのだろうか?
いけない行為だと分かっていてもさと子は空が心配で後をつけた。
挨拶程度ならばその場で済ませばいい。
しかし大旦那は彼を連行した。
直感で何かあると思ったのだ。
彼等はまったく人気のないフロアの一角まで来ると足を止めた。
曲がり角の陰に隠れるさと子はこっそり会話に耳を澄ませる。
「豊福くん。玲を大事にしてくれているようだね。今日のことは情報として耳に入れている。足を負傷したとか?」
「大したことございません。それに大事にしてくださっているのは彼女の方です。彼女は本当に俺を大事にしてくださいます。
……本当に、御堂家の方々には恩を返しても返しきれません。頭ばかりが下がる重いです」
「そう言ってくれると嬉しいよ。君も立場は弁えているようだしな。
分かっているようだが、借金の肩代わりとしてやるべき君の使命は御堂家のために生き、そして死ぬことにある。当然息子も作るよう努めてほしい」
さと子は声を上げそうになった。慌てて両手で口元を塞ぐ。
え、なに、借金? 借金の肩代わりとは?
いやそれ以上に、息子? むすこぉ?
「豊福くん、息子はまだかな?」
「(うえぇええええ?! いやちょ、もう作れと?!)……まだ時間を要しますが、が、頑張ります。それで、ご用件とは?」
「ああ、当然息子の件なんだが」
「(胃、胃が痛ッ。嘘だろ。スチューデントセックス到来?! そんな無茶苦茶な!)む、息子の件ですか。え、えーっと」
「ふふっ。そう言いたいが息子の前に君に一つ、交えて欲しい女性がいてね」
ひぇえええ、交えて欲しい女性ですか?!
って、え、交えて欲しい女性って。
彼には玲という立派なお嬢様がいるのに、何故、そんなことを。
彼も同じことを思ったのだろう。あからさま動揺を示している。
そんな彼に淳蔵は凛と澄んだ声で尋ねた。
「竹之内家の三女とは意中関係だったそうだね」
なら、その彼女と肉体関係を持ちなさい。
今の彼女なら必ず君と肉体関係を持てる、淳蔵は細く綻んだ。
「御堂家のため、玲のため、君のご家族のために、竹之内家三女と繋がりを持ちなさい。豊福くん。これは命令だよ」
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