前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
「真衣姉さんのおかげで終わったんですよ!」
中に入ってくる真衣の手を取ってはしゃぐ鈴理に、真衣は呆気取られていたがすぐに頬を崩した。
「良かったですね」
貴方の努力が実ったのですよ。
真衣の言葉に鈴理は姉さんのおかげだと繰り返して、持っていた紙パックを軽く投げてキャッチする。
後は大雅のデータと合わせて両親に提出、凝り固まった頭に破談の話を持ちかければすべてが完了だと鈴理は綻んだ。
長い長い道のりを経てここまできたのだ。
必ず成功させる。
それこそ死ぬ気で。
真衣に吐露し、「本気で打ち込めて良かったです」鈴理は心情を重ねた。
「空のことも勿論、行動を起こす要因として挙げられるのですが、彼のことが無理だったとしてもあたしは自分の起こした行動に悔いはしません」
自分の環境を変えるためにこれほど努力したことがあったでしょうか?
あたしは今まで、自分の個性ばかりを主張して、周囲を納得させるだけの行動を起こしていませんでした。
立ち振る舞いばかりの評価ばかり気にして……、正直に言うと特に真衣姉さんと比較されるのがとても嫌で。
真衣姉さんとあんなに仲が良かったのに自ら溝を作ってしまいました。
貴方が寂しい思いをしているのも知っていたのに。
けれど貴方はあたしが苦境に立たされている時に手を差し伸べてくれた。溝も飛び越えて。
「貴方には感謝しても感謝しきれません。本当にありがとうございます」
照れくさげに礼を告げると、「感謝すべき人は大雅さんでしょう?」と綻んだ。
彼にちゃんとお礼を言うべきだと促され、鈴理は唇を尖らせた。
「それは分かっているのです」
ただなんとなく言い辛くて、ありがとうの「あ」も言えない。
喧嘩友だからだろうか?
真衣が笑声を零した。
軽く抱擁してくる彼女は、「最後まで頑張りましょう」仮に恋のことが駄目だったとしても、貴方の人生は勝ち取るべきです。と、声援を送ってくれる。
大きく頷く鈴理だが、恋もまだ諦めていないとおどけてみせた。
先に彼を好きになったのは自分なのだ。
まだまだ好敵手に引けを取れないと鼻高々に明言する。
「けれど欲求不満なのですよ」
彼が傍に居ないから、学校は一緒でもそういう関係じゃなくなって早四ヶ月が経とうとしている。
そろそろ欲求が爆ぜそうだと鈴理。真衣がらんらんに目を輝かせたため、鈴理は先手を打っておいた。
「彼氏を攻めたい欲求ですからね」と。