前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
「うちの両親とですね。本物のウニを食べる夢を見たんっすよ。いやぁ、惜しかったっすね。本物のウニってどんなのか食べてみたかったんっすけど」
「ん? 本物? 君はいつも偽物を食べているというのかい?」
「俺、実はウニって食べたことがなくって。高級食材だってことは分かってましたし、食べられるのは大人になってからだろうって思っていました。
そんな時、母さんが味だけでも体験してあげようってプリンに醤油を垂らして」
「待て待て待て。なんだって?」
「え、だからプリンに醤油を垂らしたんっす。それを混ぜて食べてみるとあら不思議、ウニの味! らしいっす。
俺は本物のウニなんて食べたこと無いんっすけど、認識的にウニはプリンと醤油の融合物だと思っていますっす」
これはマジな話だ。
ウニを食べたことの無い俺のために、テレビを観ていた母さんが「これがウニの味なんですよ」って食わせてくれたんだよな。
プリンと醤油のフュージョンって凄いよな。
混ぜればウニのお味なんだぜ!
庶民的な食材も頑張れば高級食材に近づけるってことだ。
俺的に笑い話として話したんだけど、あれ、何故か御堂先輩が落ち込んでいる。
「切ない」なんてご感想を下さいました。
いや、これは世紀的な大発見だと思うっす。
最初にこれを発見した人は英雄且つ天才だと思うんだ。
「ウニな」
今度食べさせてやるから、だからその食べ合わせはやめておけと御堂先輩に言われる始末。
なんでっすか!
食べ合わせのフュージョンにケチつけちゃあかんと思うっす!
まったくお嬢様お坊ちゃんは食に関して視野が狭いんっすから。
もっとひろーい目で見ないと食は楽しめませんよ!
食べ合わせ話題のおかげでテンションに関して深くツッコまれるもことなく、俺は無事に学校に到着する。
「それじゃ」御堂先輩に手を振ると、「今日も頑張って来い」微笑みをくれた。その笑みが罪悪を生んだけど表には出さない。
俺の王子様は本当に聡いんだ。
それはきっと鈴理先輩以上に。
車を見送った俺はその手を下げると、表情を消して目を眇めた。
重たい鞄を肩にからったまま通い慣れた学校の門を潜る。
ブレザーのポケットに入っている二つのUSBメモリがゆっさゆさと揺れているのを肌で感じた。