前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
もうなんだよ、この展開!
心の底から叫びたくなっていたら、晩酌していたであろう父さんが出てさ。
『空、帰ってきなさい。お前の家はちゃんとあるから』
……って。
どれだけ、この一言に救われただろう。
悩んでいる間、自分がとてもとても孤独だったんだと気付かされた。
バッカみたい泣きたくなった。
場所が駅じゃなかったら俺は大号泣の一発KOだった。
なんだいこの親ばか。
もっとシャキッとしろとか言っても良いのに!
ええい、ドチクショウ。
鼻水が垂れてきた! ティッシュがない! ブレザーの袖口で拭いてやる! ばばちい? やっかましい! 汚いのは承知のうえでい!
結局、俺は公衆電話の前でちょっとだけ泣いて、両親に何度も謝って、選択するべき未来を選ぶ決意をした。
誰かの未来を変える恐怖より、自分の未来を変える恐怖を選ぼうって。
これは自己犠牲? 健気な行為? バカヤロウ、俺はそんなイイ奴じゃない。
俺は多くの人から恨まれたくない一心でこの未来を選んだ。
父さん、母さんには凄く申し訳なかったけど、俺はやっぱり自分が可愛くてしょうがなかった。
誰かの未来を変えて後悔する人生なんか歩みたくなかったんだ。
実親の思い出だけでも苦くてしょうがないというのに、他人の未来を変えて後悔する。
そんなのごめんだった。
他者に恨まれるような行為をするのも怖くて出来ない。
父さん母さんなら、きっと俺のしたことを許してくれるだろう。
彼等の優しさに甘えて、俺は自分の出した答えを取った。
次世代の三財閥の関係を壊すのも嫌だった。
関係を壊すより、三財閥共栄の方がずっと良いって思った。
あの三人ならきっと自分の財閥を引っ張って共栄できる。
普段から仲が良いんだ。
喧嘩ばっかりしているけど、あの三人ならきっと大丈夫だと確信が持てた。
三財閥の関係を壊さない未来は、御堂先輩の未来を守ることにも繋がる。
ギクシャクする関係なんて、誰かを傷付ける未来なんて、誰かを支配した未来なんて御堂先輩も望んでいない。
そりゃどれを取っても誰かを傷付ける選択肢しかなかった。
だけどせめて、どうかせめて、被害を最小限に抑える未来を。恨まれない未来を。誰かを幸せにする未来を。
そう思って俺はこの選択肢を取った。
事を知ればきっと御堂先輩はショックを受けるだろう。
彼女はとても優しいから。
こんな形で傷付けてしまって……、本当に申し訳ないや。
御堂先輩、ごめんなさい。
貴方と未来を歩む選択肢を取れば、今以上に傷付けてしまう。
だから、だから……、貴方ならきっともっと良い男性が見つかる。絶対に。