清水の舞台
中年の男二人であった。

「焼酎は何をおいている」

一人が聞いた。

倉田はメニューを差し出した。

男たちは少し考え、注文した。

「じゃあ、魔王の水割りを二つ」


「はい。少々おまちください」

―――

また沈黙が続くのか。

これでは、この二人の客は二度と来てくれないし、こんなやり方では他に客もつくわけがない。

むろん、話しかけてこないでくれ、という客もいる。ただ、そういう客は空気でわかる。

この中年二人は話しかけて、常連客にしなくてはならないのだ。

それが水商売の営業というものである。

他人の店が、どうなろうと知ったことではないが、倉田の無邪気な性格が真理子を動かした。

「お二人はよくこの店に来られるんですか」

真理子が二人に話しかけた。

退屈そうな客たちは、若い女に話しかけられて、テンションがあがった。

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