空人1〜奇跡〜
 


ホームルームが終わり、クラスメートが楽しそうにお喋りしながら続々と教室を出ていく。


一方、俺は机の上に突っ伏したまま。


まあ動く気がしないんだから仕方ねぇんだけど。


ついでに言うと、担任に睨まれた気もする。


でもそんなの今更の話であって、特に問題はない。


窓から心地良い日差しが体に降り注ぎ、徐々に体の感覚が薄れていく。


ふわぁぁ……。眠ぃ。






それから暫くして。


う、うーん。


体を伸ばしながらゆっくりと目を開く。


徐々に体の感覚を取り戻し、視界がはっきりしてくる。


どうやら耳にも同じ事が言えるようで。


感覚を取り戻してすぐに、教室の中が異様な静けさに包まれているのに気付いた。



首を捻り、辺りを見回す。


って、誰もいねえ……。


開いている窓からは規則正しい掛け声が聞こえてくる。


おそらく野球部だ。


もう、部活はとっくに始まっている時刻。


ざっと計算して、一時間近く寝てた事になる。



はあ――…。


だからって、これからどうすんのが良いんだろうか。


……。正直、もっと寝たいというのが本音。


でも、これ以上誰もいない教室で寝続けるのは気が引ける。


再び寝落ちして誰かに見つかったりしたら面倒、おまけに親も煩いだろう。


……。よし。


短く息を吐き、椅子から立ち上がろうとする。




と、その時。



“タンッ、タンッ”



ビクッ。


全身に電流が走った。


いきなり肩を叩かれ、思わず体が反応してしまう。


な、何だ――…!?


< 2 / 13 >

この作品をシェア

pagetop