One Day~君を見つけたその後は~
「え?」

いきなり、何?

“ワン”って……犬の泣き声?

それとも、英語の“one”のこと?

っていうか、さっきの話の流れから、一体どうすれば“ワン”なんて言葉が出てくるの?

なにそれ、まったく意味が分かんないんだけど!?

私の頭の中は、?マークでいっぱいだ。


だけどヤマタロは、それ以上の説明をしてれなくて、ただ「いいから、言ってみて」って言うばかり。


……そんなことを言われても。


「え……っと」


目の前には、ヤマタロの顔。

口元は半開きで、頑張って笑うのを我慢してる。

それに、面白いことを思いついたって感じの、楽しそうな目をしてる……。


「……ねぇ。これって、陽人の話と関係あるの?」

「いいから。早く」

「……どう言えばいいの?」

「別に、普通に言えばいいから」

「普通?」

「そう。できるだけ、お前らしく」


いやいや。
私らしい“ワン”って、どんなの?

もう、さっぱり意味が分からないよー!


だけど、こういうときって、ヤマタロは絶対に許してくれないんだよね。

私が言わなきゃ、このわけの分からないやりとりは、いつまでも終わらないんだ……。


いい加減、至近距離からの無言責めに耐えきれなくなってきたし。

私は覚悟を決めた。


……うん。
よくわかんないけど、とにかく、言えばいいんだよね、言えば!!


「えーと……」

「……」


やっぱり恥ずかしくて、目が泳ぐ。

できたらこっちを見るの、やめてほしいんだけど。


「えーと、えーと」

「……」


ソワソワ落ち着きのない私を、にっこり微笑んで眺めているヤマタロ。

もーう、なに一人で楽しんでるのよー!


「えー……っと……」

「……」


もういい! 言っちゃう!



「……わん?」



……あれ?

語尾、上がっちゃった。
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