狂想曲
部屋はいつの間にか真っ暗になっていた。
テーブルの上に残されたままになっている、食べ残した料理と、その場にうずくまったままの私。
あれからどれくらい経ったのかはわからない。
ぐるぐるぐるぐる、あの瞬間のことばかり思い出す。
どうしてこんなことになってしまったのだろう、何で奏ちゃんはあんなことをしたんだろう、と、今更な堂々巡りばかり繰り返して。
私の携帯が無機質な電子音を響かせたのは、そんな時だった。
それでも、出る気にはなれなかった。
だから無視していたのに、なのにそれは鳴り止まない。
私はだらんと伸ばしたままだった腕を動かし、携帯を持ち上げた。
「俺だけど」
「うん」
「何やってんの」
機械越しに聞こえてくるキョウの声に、思い出したようにまた涙腺が緩んだ。
『取り返しのつかねぇことになってから後悔してりゃいい』と、前にキョウに言われたけれど。
ほんとにそうだ。
「つーか、泣いてんのか?」
「あのね、キョウの言った通りだったなぁ、と思って。そしたら自分の馬鹿さ加減が嫌になって」
私と奏ちゃんは、どこで間違えてしまったのだろう。
私はちゃんと“いい妹”を演じていたのに、それがいけなかったんだろうか。
考えたってわかるはずもない。
「私ね、ほんとに取り返しのつかないことになっちゃったかもしれない」
言った傍から溢れる涙。
キョウは電話口の向こうで息を吐いた。
「今、家だよな? とりあえず迎えに行くから」