天体観測
滝を彷彿とさせるような轟音の中、自分の存在と、夏はまだまだ終わらないことを主張するかのように、セミが鳴いている。雨は本降りになっていた。
僕はBGMにオアシスの『little by little』を選曲してソファに座っている。
玄関の前に立っていたのは、雨でびしょびしょに濡れた恵美だった。恵美は生きているのか死んでいるのかわからないような目をしていた。僕は、恵美にかける言葉が見つからなかった。その間も、天高くから降り注ぐ雨粒が、恵美を侵食していく。
かける言葉は見つからなかったけれど、とりあえず、僕は「どうした?」と聞いた。すると、恵美は僕の胸にもたれかかって、いつかのように声を殺して泣いた。
僕はそんな恵美を抱き締めてやることも出来ず、ただただ、スポンジの壁になって恵美が倒れこまないように支えて立っていただけだった。触れてはいけなかった。「入れよ」とも「泣くなよ」とも言ってはいけなかった。それでも、何らかの行動は起こさなければいけなかった。僕は黙って恵美の手を引き、濡れた体を温めるため、風呂場に連れていき、シャワー浴びるように促し、恵美はそれに従った。
時計が五時を告げた。僕は『little by little』を聞きながらピクリとも動かずに恵美を待っている。かれこれ二十分は経っているのに恵美が出てくる気配はない。
暑くて堪らない。外は雨。僕は家の中。なのに、汗が滝のように出てくる。まるで、行ったことはないけれど、砂漠みたいだ。
僕は手で煙草を吸っているふりをして、『little by little』を口ずさんだ。それが救済になるとは思わなかった。ただ、僕がここにいる証明がほしかった。
僕はBGMにオアシスの『little by little』を選曲してソファに座っている。
玄関の前に立っていたのは、雨でびしょびしょに濡れた恵美だった。恵美は生きているのか死んでいるのかわからないような目をしていた。僕は、恵美にかける言葉が見つからなかった。その間も、天高くから降り注ぐ雨粒が、恵美を侵食していく。
かける言葉は見つからなかったけれど、とりあえず、僕は「どうした?」と聞いた。すると、恵美は僕の胸にもたれかかって、いつかのように声を殺して泣いた。
僕はそんな恵美を抱き締めてやることも出来ず、ただただ、スポンジの壁になって恵美が倒れこまないように支えて立っていただけだった。触れてはいけなかった。「入れよ」とも「泣くなよ」とも言ってはいけなかった。それでも、何らかの行動は起こさなければいけなかった。僕は黙って恵美の手を引き、濡れた体を温めるため、風呂場に連れていき、シャワー浴びるように促し、恵美はそれに従った。
時計が五時を告げた。僕は『little by little』を聞きながらピクリとも動かずに恵美を待っている。かれこれ二十分は経っているのに恵美が出てくる気配はない。
暑くて堪らない。外は雨。僕は家の中。なのに、汗が滝のように出てくる。まるで、行ったことはないけれど、砂漠みたいだ。
僕は手で煙草を吸っているふりをして、『little by little』を口ずさんだ。それが救済になるとは思わなかった。ただ、僕がここにいる証明がほしかった。