天体観測
朝起きると、時計は七時を指していた。僕は昨日のことが嘘かのような爽やかな気分でベッドを出て、ダイニングに向かい、昨日と同じようにミネラルウォーターを一口飲んだ。既に母さんは、仕事に行ったみたいだ。母さんが取ってきたと思われる新聞を手に取った。一面には、昨日ニュースでやっていた府議の斡旋収賄の事件がでかでかと載っていて、少し気になって読んでみたが、こういう類の事件は、似たり寄ったりの内容だってことを再確認させられるだけだった。

庭に出て、大きく深呼吸したとき、ラジオ体操の事を思い出したけど、到底行く気にはなれなかった。

今日も、昨日に負けず劣らず暑い。今はまだ、セミの合唱がないぶんマシだ。

今日こそ一日中机に向かうことにした僕は部屋に戻った。マスターの言う通り、夏は勝負の時期だ。四年制大学に進むにせよ、専門学校に進むにせよ。

正直、マスターにはあんなことを言ってしまったが、僕には全く専門学校に行く気がなかった。あれは場の空気とか、宇宙の神秘とかそういう見えない力に言わされた言葉だ。あの瞬間僕の体に霊が入り込んだってことも考えられる。

そうして僕は、昼までに英語長文二題と、現代文評論と、古典をそれぞれ一題ずつ解いた。

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