天体観測
父さんは、ソファに座って、恵美のために用意したバタートーストとアイスコーヒーを食べながら、庭の芝生をじっと見つめていた。それから急に僕の方を向いて、言った。
「このバタートースト、うまいよ」
「うん」
「勉強してるか」
「うん」
「お前、『うん』しか言えないのか」
「言う気がないだけさ」
「なるほど」
「父さん、僕だって暇じゃないんだ。用件があるなら早く言って、出来れば早く帰ってほしい」
「父親になんてこと言うんだ。悲しいよ」
「父さんじゃなきゃこんなこと言わないよ」
父さんは天井を見上げて、ゆっくり息をついた。息子の僕から見ても、決して悪くない顔がその瞬間、すごく年老いて見えた。父さんは、今年で四十のはずだけど、人間はこういう何気ない仕草から老化していって、その後になってようやく、しわが増えたり、足腰が弱くなっていくのだろうか。
父さんは天井に向いていた顔を、さっきとは反対に、ゆっくり、ゆっくりこちらに向けて、言った。
「それ、褒めてるのか?」
「褒めてるように聞こえてたら、僕は父さんの息子を辞めるよ」
「隆弘くんな、少し危ないかもしれない」
その言葉があまりに唐突で、その口調があまりに真面目過ぎて、すぐには父さんの言っていることが理解できなかった。
「このバタートースト、うまいよ」
「うん」
「勉強してるか」
「うん」
「お前、『うん』しか言えないのか」
「言う気がないだけさ」
「なるほど」
「父さん、僕だって暇じゃないんだ。用件があるなら早く言って、出来れば早く帰ってほしい」
「父親になんてこと言うんだ。悲しいよ」
「父さんじゃなきゃこんなこと言わないよ」
父さんは天井を見上げて、ゆっくり息をついた。息子の僕から見ても、決して悪くない顔がその瞬間、すごく年老いて見えた。父さんは、今年で四十のはずだけど、人間はこういう何気ない仕草から老化していって、その後になってようやく、しわが増えたり、足腰が弱くなっていくのだろうか。
父さんは天井に向いていた顔を、さっきとは反対に、ゆっくり、ゆっくりこちらに向けて、言った。
「それ、褒めてるのか?」
「褒めてるように聞こえてたら、僕は父さんの息子を辞めるよ」
「隆弘くんな、少し危ないかもしれない」
その言葉があまりに唐突で、その口調があまりに真面目過ぎて、すぐには父さんの言っていることが理解できなかった。