天体観測
七時過ぎ、僕はダイニングの椅子に腰かけ、『ティファニーで朝食を』を読んでいた。
外はまだ太陽が支配していて、夜の闇は太陽が消えるのをじっと堪え忍んでいた。
隆弘は、何週間かの後、死んでしまう。それは、僕が今ここで、『ティファニーで朝食を』を読んでいることと、同じくらいたしかなことで、きっとその結果が変わることはない。
隆弘は死ぬ。
僕がその事実を再確認して、持っていた本を壁に向かって投げ付けたとき、目に携帯電話が飛び込んできた。
僕はフローリングに座り、携帯電話を拾い上げ、着信履歴を確認しようとしたけれど、うまく操作が出来ない。絶望で目が霞む。
ようやく着信履歴を開いた途端、チャイムが鳴った。
何故か、玄関に向かう気力が湧かなかった。わずか七、八メートル先のドアノブに手が届かない。
チャイムはしばらく間をあけて、もう一度鳴らされた。僕はやっぱり立ち上がることも出来なかった。
チャイムの主は諦めたのか、それから数分経ってもチャイムが鳴る気配がしなかった。
そのとき、チャイムの変わりに、僕の手の中で携帯電話が鳴った。
一度目は取ることが出来なかった。これは絶望とか、気力とかそういったものではなく、ただ単に虚を突かれたからだった。
二度目に鳴ったとき、僕は一つ深呼吸をして、意を決して電話に出た。
「もしもし」
「悪かった。まだ家の前いるか?」
「うん。門のところにおる」
「待っててくれ。すぐ出るからHIROにでも行こう」
外はまだ太陽が支配していて、夜の闇は太陽が消えるのをじっと堪え忍んでいた。
隆弘は、何週間かの後、死んでしまう。それは、僕が今ここで、『ティファニーで朝食を』を読んでいることと、同じくらいたしかなことで、きっとその結果が変わることはない。
隆弘は死ぬ。
僕がその事実を再確認して、持っていた本を壁に向かって投げ付けたとき、目に携帯電話が飛び込んできた。
僕はフローリングに座り、携帯電話を拾い上げ、着信履歴を確認しようとしたけれど、うまく操作が出来ない。絶望で目が霞む。
ようやく着信履歴を開いた途端、チャイムが鳴った。
何故か、玄関に向かう気力が湧かなかった。わずか七、八メートル先のドアノブに手が届かない。
チャイムはしばらく間をあけて、もう一度鳴らされた。僕はやっぱり立ち上がることも出来なかった。
チャイムの主は諦めたのか、それから数分経ってもチャイムが鳴る気配がしなかった。
そのとき、チャイムの変わりに、僕の手の中で携帯電話が鳴った。
一度目は取ることが出来なかった。これは絶望とか、気力とかそういったものではなく、ただ単に虚を突かれたからだった。
二度目に鳴ったとき、僕は一つ深呼吸をして、意を決して電話に出た。
「もしもし」
「悪かった。まだ家の前いるか?」
「うん。門のところにおる」
「待っててくれ。すぐ出るからHIROにでも行こう」