天体観測
「負けか……わかる気がする。認めたくないってこと、わかるよ」

「違うの。そうじゃない。何て言うか……一つ、強がり言っていいかな?」

「うん」

「私ね、隆弘が死ぬなんて考えられへんの。おじさんの説明もイマイチぴんとしなかったし、何より、隆弘は生きたがってるから。死ぬわけないよ」

「それ、精一杯か?」

僕の言葉の後、恵美は俯いて、呟いた。

「うん、もう余裕ない……何でなん?何で隆弘なんよ。わからへん。わからへんよ」

恵美は泣き出した。昨日の声を殺す泣き方ではなく、もう誰の目から見ても明らかに泣いているとわかる泣き方だ。

こう連日泣かれても、僕という人間は、対処に困ってしまう。

「何か……励ましてや。『隆弘は大丈夫』とか『俺がついてる』とかさ」

「俺がついてる。だから泣くな」

「隆弘は大丈夫は?」

「俺にそれを言う資格があるなら、隆弘はとっくに目を覚まして恵美の隣にいるよ」

恵美は昨日と同じように、ティッシュで鼻をかんで、僕の方を見た。

「やっぱり、司は冷たいわ」

「ごめん。悪かった。俺はどう頑張っても第三者以下の存在だからイマイチ主観的になれない」

「まあ、それはそうやね」

恵美はもうすっかり泣き止んでいて、ここに来たときマスターに出してもらったアイスココアを一口飲んだ。

「出来事って、連続して起こるもんなんだな。昨日恵美とプラネタリウムを見に来て、今日は隆弘のことを聞いて、明日は何があるのかな?そのこと考えると正直怖いよ」

「私も……やな」
< 28 / 206 >

この作品をシェア

pagetop