天体観測
僕らは、お互いの顔を見つめあった。あのセンスのいいライトに照らされている恵美の顔は、ある種の魔力を持っていて、強烈に僕をひきつける。この二人きりの空間で変な気がおきないのは、僕に勇気がないからと、その対象があまりにきれい過ぎるからだろう。それは妙に歯痒いことだった。
僕はそれに対抗すべく、無理やり冷静になり、少し強めの口調で言った。
「どうしたい?」
「どうしたいって、何を?」
「隆弘に残された時間は少ない。恵美は隆弘のためになにかしてやりたいって思ってるんじゃないのか」
「それは当たり前のことやわ。そのときまで、毎日病院に通って、一日中隆弘の顔を見てやるつもり」
「俺が言ってるのは、そういう気休めじゃない」
恵美は目を伏せて、じっとカウンターを見た。少し緊張しているようだった。
「司の言いたいこと、なんとなくわかる。けど、それは私たちにはどうしようも出来ないことや」
「たしかに今までの俺たちならそうだったかもしれない。でも今の俺たちなら出来るよ。隆弘が助かる可能性より、ずっと高いんだから」
「私にはそれが隆弘といっしょにいることと、引き換えに出来るほどのこととは思えへんの」
「でも、俺はこのままでいいと思えない。隆弘もきっと……そう思ってるはずだよ」
「そうかな……」
恵美は、不意に力を抜いて、隣の椅子に座っている僕の方にもたれかかってきて、僕は体の向きを変え、胸で受け止めた恵美を、抱きしめた。
僕はそれに対抗すべく、無理やり冷静になり、少し強めの口調で言った。
「どうしたい?」
「どうしたいって、何を?」
「隆弘に残された時間は少ない。恵美は隆弘のためになにかしてやりたいって思ってるんじゃないのか」
「それは当たり前のことやわ。そのときまで、毎日病院に通って、一日中隆弘の顔を見てやるつもり」
「俺が言ってるのは、そういう気休めじゃない」
恵美は目を伏せて、じっとカウンターを見た。少し緊張しているようだった。
「司の言いたいこと、なんとなくわかる。けど、それは私たちにはどうしようも出来ないことや」
「たしかに今までの俺たちならそうだったかもしれない。でも今の俺たちなら出来るよ。隆弘が助かる可能性より、ずっと高いんだから」
「私にはそれが隆弘といっしょにいることと、引き換えに出来るほどのこととは思えへんの」
「でも、俺はこのままでいいと思えない。隆弘もきっと……そう思ってるはずだよ」
「そうかな……」
恵美は、不意に力を抜いて、隣の椅子に座っている僕の方にもたれかかってきて、僕は体の向きを変え、胸で受け止めた恵美を、抱きしめた。