天体観測
僕はテーブルを強く叩き、立ち上がった。二人が僕の方を見ていたけれど、無視をしてトイレに行った。少し頭が痛い。本当に風邪を引いたかもしれない。

僕はトイレで用を足し、思いっきり顔を洗った。頭の痛みは消えなかったけれど幾分かはマシになった気がする。

トイレの前には恵美が立っていた。

「何やってんの?」

僕は、かなり間抜けな質問をした。けれど、恵美の返事もそうとう間抜けだった。

「やあ」

恵美はなぜか笑っている。僕はただ立っている。

「行かんの?」

「行くよ。わざわざトイレまで迎えに来たの?」

恵美は突然鼻の前で手を合わして「ごめん」と言った。

「ごめん。こんなことのためにここに来たんじゃないもんね」

僕は返事をしなかった。頭の痛みがまた戻ってきた。

「怒ってるやんな?」

「別に」

「嘘」

「ほんとだよ」

「すごい怖い顔してるで」

「怒る理由がないだろ。今日はすることがないんだから恵美の好きにしたらいい」

「じゃあ……」と言って、恵美の台詞は中断した。

「よう」

僕の後ろから聞き覚えのある声がした。しかも、ごく最近聞いた声だ。

「どうしたん?村岡くん」

僕が振り向くと、村岡が手を振りながらこっちに近づいてきていた。

「練習の帰りにここの前を通ったら、車あったから入ってきた」
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