天体観測
村岡とはそこで別れた。あいつは大阪市内に住んでいて、今日は本当にたまたまチームの友達と自主トレをした帰りに通りかかったのだそうだ。村岡はバイクでここまで来ているらしい。あんな雨の中バイクで走ってきたなんてとんでもないバカか、さもなければ自殺志願者かどちらかだ。

帰りは父さんが運転した。もちろん父さんが志願したんじゃない。僕がそうさせたからだ。僕はあの頭痛が再発するのが怖かった。だからその原因になりそうなことを、極力避けたかったのだ。

父さんの運転は恐ろしく滑らかで、一点の無駄もなかった。ペーパードライバーの僕と比べるのは失礼だと思うけれど、断然僕よりうまい。

数分後、恵美の家に着いた。父さんは｢挨拶してくる｣と言い張ったが、僕と恵美はそれを全力で防いだ。　

その数分後、僕らは家に着いた。携帯のディスプレイには八時五分と表示されている。

家では母さんが、僕らを待ちわびていたようだ。ダイニングテーブルにはちゃんと三人分の夕食が並べられている。

僕らは手を洗い、五年前と同じ配置で座った。懐かしさを通り越して、新鮮な感じがする。

｢いただきます｣

僕と父さんは声を合わせていった。なのに、その声は病人みたいで、母さんは早くも笑いだした。
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