天体観測
僕と恵美は二人揃って、ため息をついた。こう連日暑いと、人の意志っていうのは簡単に曲がるものなんだと実感させられる。何か手がかりが見つかったならば、話はもっと好転しているだろうに。

「二人して何暗い顔してんねん。こんなおもろい人がいて、こんなうまいコーヒー出してくれる店におんねんぞ?もっと元気出せよ」

「うるさい」

恵美は無理に笑い、僕はぶっきらぼうに言った。

村岡は「しけとんな」と言って、また会話に戻っていった。何も知らない奴は幸せで、羨ましい。

「なあ、ちょっと相談やねんけど」

恵美は右手で手招きし、左手で耳を指さしている。僕は黙って左耳を近付けた。

「二人、もしくはマスター入れて三人に協力してもらったらどうやろ?」

僕と恵美は立場を入れ替えた。

「俺は別に恵美が嫌な気がしないならいいけど」

「嫌な気?」

「隆弘は今死んでもおかしくないんだ。それを話すのがつらくないならってことさ」

恵美は少し僕から離れ、右手人差し指を顎に付けて、うんうん唸った。

「別にいいよ。それに人数多い方がはよ見つかるかもしらんし」

僕らは互いに頷いた。たぶん、説明役は僕だろう。

僕は体ごとテーブル席の方を向き、一つ咳払いして、言った。

「三人に聞いてほしいことがあるんだ」
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