天体観測
僕は二年前の事故のこと、その犯人が見つかっていないこと、隆弘が原因不明の病で今、このタイミングで死んでもおかしくないこと、僕らが見た夢のこと、そして僕らがやろうとしていること、やってきたことを時間にして一時間ほどで説明した。

その間、マスターは真剣な眼差しで、村岡は驚愕の事実を突き付けられたような当惑した目で、雨宮は涙目で、僕と恵美を見ていた。

「少年が言ってたのはこれか」

マスターは沈黙を嫌ったのか、僕らが説明し終わると、すぐに言った。

「うん」

「たしかに子供で解決するには厳しい問題やな」

「だからみんなの力を借りたいんだ」

僕は頭を下げた。こういうところは子供じゃいけない。大人でないといけない。

すぐに恵美も僕に倣い、頭を下げた。

「あの……私なんかでいいんなら……」

雨宮は小さく右手を挙げて、言った。彼女の目はまだ涙で濡れていて、すごくきれいだった。

恵美は「ありがとう。沙織」と言って、雨宮に抱きついた。

マスターはそれを見て、少し笑って、言った。

「少年とか弱い女の子二人じゃ心許ないやろ。僕も手伝ったるよ。でも立場的に意見言うことと……コーヒー無料サービスぐらいしかできひんけどね」

僕はマスターと握手をした。意外に豆だらけの手だった。

僕らは、最後の一人の方を見た。表情から察するにまだ決めかねているようだ。

「たしかに村岡はプロになるんだから余計なゴタゴタは避けたいよな」

僕が顔を見ると、村岡は観念したらしく、呆れた様子で言った。

「わかったわ。やる。やったらいいんやろ。しゃあないわ」
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