天体観測
一時間半後、恵美と雨宮が僕らのところに来た。二人の顔はりんごのように赤かった。それから察するに向こうも同じような環境だったようだ。

「何か見つかった?」

僕の問いに二人は首を横に振ってから、その場にへたりこんだ。

「もう無理。今日、暑すぎるわ」

恵美の声は今にも泣きそうで、見ているこっちも泣きそうになりそうだった。

「そうやな。なあ、足立。今日はこのぐらいにしとこう」

僕は雨宮の方を見ると、彼女は肩で息をして、僕の視線に気付くと無理から作った笑顔を、僕に向けてくれた。

「そうだな。せっかくコーヒー飲み放題なんだから使わないともったいないし、戻ろう」

HIROの店内に、マスターはいなかった。僕らは仕方なくテーブル席に座り、マスターの帰りを待つことにした。

マスターのいない店内はいつもとはどこか違う気がする。九十九パーセントはいつも通りかもしれない。けれど大事な一パーセントが抜け落ちてしまっている。それだけで別の店の気さえする。

「喉渇いたわ……死ぬぞ。俺」

「私も限界やわ」

「勝手に作ったろか?」

そう言うと、村岡は生き返ったように立ち上がった。
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