『若恋』若の嫉妬【完】
冗談じゃねえぞ。
夢で他の男の名を呼ばれて、その上にキスだ?
「りお、大丈夫か?」
苛立ちを抑えてりおを揺さぶって夢から起こす。
夢でもキスシーンなんてやらせねえ。
「あれ、…奏さん…」
焦点の合わないうるうるした瞳で俺を見上げて、それからふわあっと花のような柔らかい笑みを浮かべた。
こてん。
次の瞬間には俺の胸に額をすりすりした。
「よかった…奏さんが、…来てくれた」
何がどうなった夢を見たのかわからないが、とにかく安心したらしい。
そのまま俺のシャツを掴んで寄りかかった状態で寝息をたて始めた。
額が熱い。
掴んでいる手が熱い。
寄りかかった体全体が熱い。
離して横にさせようと思ったがそれもりおを見てたら出来なかった。
少し考えてそのままでいることにした。