『若恋』若の嫉妬【完】
規則正しい寝息を紡ぐ薄いくちびるに触れたい。
触れたらどうなるだろう?
怪我をしてこの屋敷に連れて来てからの一緒に暮らした微妙な関係は崩れてしまうかもしれない。
そう思うと、女を知り尽くした自分でもりおには指一本だって触れるのが怖い。
結局、触れはしないまま時間だけが過ぎる。
「…ん?」
「あ、目が覚めたか?」
「…?…あれ?」
トロンとした眼が開いた。
胸に寄りかかるようにして眠ってたのに気づいたらしい。
頭に?マークをたくさん並べている。
「怖い夢でも見たんだろ?魘されてたみたいだから声掛けたらこうなった」
ホントは怖い夢じゃなくて王子様役の樹の夢を見てたらしいがそれは言いたくない。
「…怖い夢?」
うーん…。
考えなくていいぞ。思い出さなくていい。
夢に出てくるほど樹を意識してるとりおが気づけば大変だ。