マイハニー
その時、授業が始まるチャイムが鳴った。
次は英語だ。
先生が教室に入ってきて、起立、礼。

岡田くんがすっと手を上げた。


「先生、教科書忘れたんで隣に見せてもらっていいですか?」


岡田くんが自分のと私の机をくっつけた。

「ってホントは持っているんだけど」

と小声で言って机の中にある教科書をちらっと見せ
舌をぺろっと出した。
私はおかしくってしょうがなく、
俯いて笑いをこらえる。

つまらない文法の授業なんかそっちのけで、
ノートの隅で筆談を始めた。


「まだみかんの匂いする」

「みかんって!マンダリンっていうの」

「宿題やった?」

「もちろん!」

「一生のお願い!写させて!」


私は大きく「イ・ヤ」と書いて、
その横にあっかんべーをしている自画像を描いた。

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