お嬢様の秘密
「葵様?私と踊ってくださいませ。その女より上手いと思いますけど。」


嫌みっぽく私を見下しながら葵に話した。


「そんな気はない。....真理亜、さっさと他の男を見つけて散れ。お前なら高寄ってくる男などいくらでもいるだろ?」


周りが凍るかのような冷たい声で吐き捨てた。


「何をおっしゃっているの?」


この人は真理亜様。


いつにも増して美人。


きっとこういう舞台で輝ける人なんだろうな。


完璧に整った顔立ちで、腰まで伸びる長い黒髪。


真っ赤のロングドレスがとても似合う。


今日はさすがに車椅子ではないけれど。


そんな真理亜様は葵の一言で綺麗に整った眉が一瞬つり上がった。


「葵様は私と踊るのは前から決まっていたじゃない。それとも私に逆らうとでも言うのかしら?」


焦りを見せたがすぐに立て直す。


一瞬真理亜様は私を品定めするかのように見回した。


私は淡い水色の膝丈のドレス。


葵のチョイスだけど、似合ってるかなんて分からないし、自信が持てない。


真理亜様は勝ち誇ったような目で私を見る。


「葵様も随分と落ちぶれたのかしら?」


コソっと、でも葵には確実に聞こえる声で呟いた。


葵の右眉が一瞬動いた。


葵は怒ってくれているの....?


葵はなんて言うんだろう。


私はこの場から離れたほうがいい。


私の頼りない直感がそう警告している。


「真理亜様。高澤君とさぞかしお似合いでしょう。ではごゆっくりお話しください。」


「秋本さん?」


「ユリさん?」


真理亜様は私にまた勝ち誇ったような顔を向けた。


私は言いたいことだけ言って会場を足早に去った。


葵と真理亜様が踊ってるのを見たくなくて....。


気づいたら私は真っ暗なお花畑のベンチに座って泣いていた。




なんで?


葵なんて少し前に会った人だよ?


他の人でもいいじゃん。


なのになんでこんなに胸が苦しいの......?





いつの間にか私は意識を手放した....。
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