HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
この場合、僕の秘密と言うのは森本のことを必要以上に構っている、と言うところだろうか。
彼女の家族の問題の裏に―――彼女自身の秘密がある……(か、どうかは分からないけど)
それを探ろうとしていることだろうか。
それとも久米が雅のことを好きで、彼にはそれ以外にも何か得体の知れない裏がありそうだ―――
それを探っている。と言うことだろうか。
どちらにしてもあまり堂々と言えることじゃないな。
「水面下で動くのはあいつの得意技だろ?お前も感化されたか?」なんて、まこはにやにや。
「そんなんじゃないよ。ただ僕のクラスは問題が多そうだって言いたいんだ。それも傍目から見れば優等生な二人が」
「見るからにワルそうな梶田や、楠 明良は扱いやすいほうだよな。鬼頭を含めて、頭がいいヤツは何を考えてるのかさっぱりわからん」
まこは大仰に肩をすくめて、ちょっと皮肉げに笑った。
「まぁ結果的に問題視するほどでもなければいいんだけど…」
「そうだな。ま、がんばってくださいよ。センセー♪お前も課外授業が大変そうだな♪」
なんて皮肉る。
僕は白い目でまこを見た。
「まこ、あんまりここで女生徒と二人きりにならない方がいいよ」
「はぁ?」
「“保健室で課外授業♪白衣の先生とあたし”なんてアブナイタイトルの噂が出回らないようにね」
僕はちょっと仕返しのつもりで舌を出すと、
「はぁ!?んだよ、その安っぽいタイトルは!俺はガキに興味ねぇっつの!」とまこはいきりたった。
ぷりぷり怒るまこを横目に、僕は“久米メンタルクリニック”のパンフレットをぎゅっと握って、ちょっとだけ窓の外を見上げた。
空には不穏な曇り空が広がっていて―――問題視するほどでなければいいな…
なんて予想が甘かったことを―――
物語っているようだった。