HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
まぁその後はお決まりの展開ですよ。
彼はちょっと恥ずかしそうに笑った。
僕も曖昧に笑って、それでも2年前と言う数字に妙な引っかかりを覚えた。
「2年前―――このクリニックを建てられたとか」
「ええ。それまで私は大学病院で精神科の診療室に勤務しておりましたが、離婚を機に独立しようかと決めまして」
「まだ新しいですよね。内装も…」と言って僕はちらりと周りを伺った。お父さんの背後にリクライニング式のベッドがあって、僕はちょっと目をまばたいた。
彼は僕の視線に気付くと、
「ああ、あれは催眠療法に使う椅子です」
と気軽に答えてくれた。
「催眠……療法……?」
聞きなれない言葉に首を捻ると、
「患者をリラックスさせて催眠状態にし、彼らの潜在意識に眠る悩みや不安を聞き出すんです。
と言ってもテレビかなんかでやってる妖しい催眠術とかではないですよ。
催眠療法は心理学や脳科学などを利用した立派な医療措置の一種です」
と彼は説明をくれた。
「はぁ……」曖昧に頷くと、彼は悪戯っぽく笑って、
「先生も試してみます?」と言ってきた。
「い、いえ!結構です!」慌てて答えると、
「ははっ。冗談です。この診療は完全予約制ですので、興味がおありでしたら是非ご連絡ください」
彼はまたも爽やかに笑った。