HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
午前中の授業がない時間帯を見計らって、僕はまたも保健室にきていた。
断じて言うがサボってるわけではない。
まこに昨日のお礼を言うためだ。
「久米メンタルクリニックの件、ありがとう。助かったよ」
僕が缶コーヒーをお土産にもっていくと、まこは早速缶を開けた。
「何かわかったか?」とコーヒーを飲みながら、まこが目を上げる。
僕も缶のプルタブを開けながら、ため息をついた。
「それが、何も…」
「お前久米の何が気になるんだよ。あいついいヤツじゃないか。廊下ですれ違っても会釈してくるし、挨拶なんかもしっかりできるヤツだぜ?」
「まぁしっかりした育ちではあると思うよ?だけどあのお父さんも何か考えていそうで、ちょっと苦手って言うか…まこは会ったことある?」
「いんや。直接はねぇな。大体精神科って俺が一番遠い存在じゃねぇか。お世話になったこともねぇし、患者の話を聞くのもめんどくせぇ。俺は自分だけで精一杯だ」
随分ストレートな物言いに僕は思わず苦笑いを漏らした。
まこらしいっちゃらしいが。
「それより、今朝の言い合いなかなかのもんだったな。珍しい。お前があそこまで怒るなんて」
まこ、は白い歯を見せてイシシと笑う。
完全に楽しんでるな、これは…
「D組とA組やりあったって聞いたけど、あの鬼頭相手にA組は勝てるのかねぇ」
とおもしろそうに口の端を曲げる。
少しの間、二人して考え込んで……
「無理だね」
「無理だな」
二人して声を合わせた。
「だってあの鬼頭だぜ?やられたら100倍以上でお返しするヤツだぜ?」
とまこが楽しそうに笑って、僕も「同感」と言いながらもちょっと笑った。