HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
ぼんやりと考え事をしながら職員室に向かう途中のことだった。
人けのない静まり返った廊下の隅で、女生徒がしゃがみこんでうずくまっているのを発見して、僕は慌てて駆け寄った。
「どうした?具合でも悪い?」
女生徒の肩に手を置いて顔を覗き込むと、女生徒はゆっくりと顔を上げた。
「森本―――…」
びっくりした。あまりにもタイムリーだったから。何せさっき変な夢を見たばかりだ。
だけどあれは夢で…現実の森本は顔を真っ青にして口元を押さえている。
「……すみません…ちょっと……貧血で…気持ち悪い……」
血の気の失せた紫色をした唇が何とか動いた。
「貧血…?とりあえず保健室で診てもらおう。立てる?」
僕が心配そうに彼女を覗き込むと、森本は何とか頷いた。
よろける森本を支えながら何とか保健室に連れて行き、まこは森本を見るなり真剣な顔でベッドに寝かしつけた。
「脈はしっかりしてるな。瞳孔も異常なし」
まこは手馴れた手付きで森本の首元に手を這わしたり、目の下を軽く引っ張って目の中を覗き込んだりしている。
「今朝ちゃんと飯食ってきたか?」
と、そっけなく言いまこがベッドに横たわった森本を見下ろしている。
「まこ、もうちょっと優しく言ってよ」
はらはらした面持ちでまこの白衣の袖をちょっと引っ張ると、
「これが俺の最大の優しさだ。これぐらいのガキはダイエットだとか何とか言って食事を抜くヤツが多いからな」なんてまこは冷たい。
だけどまこのきつい物言いにも森本は動じることはなく、
「ちゃんと食べてきました。…ダイエットもしてません」としっかりと答えた。
するとまこはちょっと意外そうに目をまばたき、メガネのブリッジを直すと、ベッドの端に腰掛けた。
「貧血持ちだと医者から診断されたことは?」
「いえ…それもありません……」
「最後の生理は?」
次の質問もあまりにもストレートで、森本がびっくりしたように目を丸め、僅かに布団を引き上げると、ちらりと目だけを上げて僕を遠慮がちに見てきた。