HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
数分後、彼女はしゃくりあげながらも何とか涙を引っ込めた。
僕はおずおずとハンカチを取り出すと、彼女に手渡した。
「…ごめんなさい。あたし…今日はみっともないとこばっか…」
ちょっと恥ずかしそうに笑って、僕からハンカチを受け取ると目元を押さえた。
僅かに施した化粧が涙で剥がれ落ちているけれど、結香さんは気にしてない様子で指で目の下を拭う。
「みっともなくないよ。そうゆうとこ、可愛い」
思わず口に出て、僕は慌てて口を噤んだ。
結香さんがきょとんとして、それでもすぐに笑顔を浮かべる。
「彼女じゃない女に、そんな簡単に可愛いとかいっちゃダメだよ。女は勘違いするよ?」
僕は思わず苦笑い。
「結香さんはその辺大人よりしっかりしてるし、大丈夫でしょ」
なんて言うと結香さんは目をぱちくりさせた。
「“結香さん”?あたし先生より年下じゃん。さん付けじゃなくてもいいよ」
とちょっと笑う。
「え?でも…森本のお姉さんだし…女の人だし…」
なんて口ごもると、結香さんはまたも笑い声を上げて、
「先生って律儀だね~ってか真面目??A型でしょ」と悪戯っぽく僕の肘をつついてきた。
僕はちょっと鼻白みながらも、
「A型デス」
わざと大げさに頷いた。