HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
結香さんはまたも声を上げて笑い、だけどその声は無理をしているようには聞こえなかった。
本当は明るい子なんだなぁ、と感じる明るい笑い声。
「でも、じゃあ君のこと何て呼べばいい?」
と聞くと、
「何て、って森本姉でいいんじゃない?エミナのことは森本って呼んでるみたいだし“さん”だと何かよそよそしいじゃん?」
と軽く肩をすくめた。
「それじゃそっけないじゃん。森本のことは生徒だからそう呼んでるだけ。僕は生徒にはこうゆう風だし。
じゃ、“結ちゃん”ってのは?」
結香さんは笑うのをやめて大きな目をまばかせながら僕を覗き込んできた。
僕は若干口の端を引きつらせると、
「また勘違いさせちゃうって?そうだったらごめん……」と小さく謝った。
「ううん。びっくりして。あんまりそういう風に呼ばれたことないから。いいじゃん、それ♪これからそう呼んでよ」
結香さん…もとい結ちゃんは白い歯を見せて明るく笑うとベンチを立ち上がった。
「先生の生徒さんが羨ましいな~」
「彼女じゃなくて?」と上目で聞くと、
「あー…何て言うの?さっきはああ言ったけど、あたし先生のこと恋愛対象には見られないみたい。だけど先生の授業は受けてみたいな」
パーカーのポケットに手を突っ込み、結ちゃんはうっすらと笑った。
「またはっきり言ったね」
僕が思わず苦笑いで応えると、
「その方がいいでしょ?変に気を持たせたりするのよくないし」
「サバサバしてるね。AB型でしょ?」
思わず聞くと、
「何で分かったの?」と結ちゃんは目をぱちぱち。
「僕の彼女がそうだから」