HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
コインパーキングに二人+二匹でのんびり歩きながら、
「もうさっきの元彼君に付きまとってこないかな」とちょっと心配したことを口にした。
本当は結ちゃんを家まで送って行くて言ったけど、本当にすぐだし、また母親や妹に見つかったら何言われるか分からないから、と言って結ちゃんはそれを断った。
「分かんない。でも大学が一緒だし、ついでにサークルも一緒なんだ。キャンプサークル。活動なんてほどんどしてないし、遊びばっかのサークルで楽そうだったから入ったんだけど」
「彼氏とラブラブ、もう付きまとってこないでって言ってやれ」
僕が言うと、結ちゃんはちょっと乾いた笑みを漏らした。
「そーだね。でも、何であたしあんな男好きになっちゃったんだろ…。あんなヤツだと分かってたら好きになんなかったのに」
結ちゃんは悔しそうに宙を睨んで、唇を引き結ぶ。
「人との距離を縮めるのは簡単なことだけど、人の深いところまで知ろうとするのは難しいことだよ。
恋人同士だって、分かり合えないことがある。知らないことがある。
それを互いに受け入れて、それでいて支えあえる関係が―――望ましいんじゃないかな」
僕の言葉に結ちゃんは前を歩くモカとゆずを見つめて、吐息を吐いた。
「人間って難しいね」
「感情がある分ね」思わず苦笑いを漏らして、
「でもきっとそうゆう人に出会えるはずだよ。今はまだ辛いかもしれないけど、がんばって」
そう言って彼女の微笑みかけると、結ちゃんは僅かに笑って、
「うん、ありがと。先生の課外授業楽しかったしすごく勉強になった」
小さく頭を下げた。