HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~


“でも今は犯人を捜そうとしないで。


警察にも行かないで。今、先生が下手に動くと、犯人を刺激して





―――雅が傷つく恐れがあります”





ごくりと喉を鳴らして、僕は文面を凝視した。


すぐ隣でまこも息を呑む気配があった。


つらつらと連なる文面が下に続き、スクロールさせようと握ったマウスにじっとりと嫌な汗が浮かんだ。


楠のメッセージには驚くべきことが書かれていた。


それは二年前にも同じ被害に遭っていたこと。


当時雅は中学二年生で、最初は不審人物から手紙やらが届いたことにはじまり、その犯行はどんどんエスカレートして、




―――ある日傷害事件にまで発展した。




ただし、雅は傷を負うことなく、代わりに彼女を庇った男子中学生が右手に負傷を負う。


その事件がショックだったのか、事件の詳細を記憶から無くした雅。


その庇った男子中学生もすぐに、その土地を離れ、以来消息は掴めず。


その後その事件は、雅にとっても不幸の元であるがため、周りの関係者に寄って沈黙される―――



だがしかし



二年経った今、何故か雅はそのストーカー事件の関係者にまたも狙われているということだった。





楠の説明は簡単で分かりやすかった。


思い起こせば、最近の彼女は少し変だった。


極力僕と居ることを……いや、まこをも避けようとして不自然な態度をとっていたっけ。


準備室に来ると、神経質なぐらい窓の外や廊下を気にしていたし、単なる教師と生徒との関係を気にしているのかと思ったが……


あの行動に裏には、そんな真理が隠されていたなんて……



気付かなかった。





あれは―――僕たちを守るために―――……







< 306 / 841 >

この作品をシェア

pagetop