HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
“でも今は犯人を捜そうとしないで。
警察にも行かないで。今、先生が下手に動くと、犯人を刺激して
―――雅が傷つく恐れがあります”
ごくりと喉を鳴らして、僕は文面を凝視した。
すぐ隣でまこも息を呑む気配があった。
つらつらと連なる文面が下に続き、スクロールさせようと握ったマウスにじっとりと嫌な汗が浮かんだ。
楠のメッセージには驚くべきことが書かれていた。
それは二年前にも同じ被害に遭っていたこと。
当時雅は中学二年生で、最初は不審人物から手紙やらが届いたことにはじまり、その犯行はどんどんエスカレートして、
―――ある日傷害事件にまで発展した。
ただし、雅は傷を負うことなく、代わりに彼女を庇った男子中学生が右手に負傷を負う。
その事件がショックだったのか、事件の詳細を記憶から無くした雅。
その庇った男子中学生もすぐに、その土地を離れ、以来消息は掴めず。
その後その事件は、雅にとっても不幸の元であるがため、周りの関係者に寄って沈黙される―――
だがしかし
二年経った今、何故か雅はそのストーカー事件の関係者にまたも狙われているということだった。
楠の説明は簡単で分かりやすかった。
思い起こせば、最近の彼女は少し変だった。
極力僕と居ることを……いや、まこをも避けようとして不自然な態度をとっていたっけ。
準備室に来ると、神経質なぐらい窓の外や廊下を気にしていたし、単なる教師と生徒との関係を気にしているのかと思ったが……
あの行動に裏には、そんな真理が隠されていたなんて……
気付かなかった。
あれは―――僕たちを守るために―――……