HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
楠からのメッセージはまだ続いた。
“雅は久米くんをストーカーかもしれないって疑ってる。
先生も、ストーカーとは違った意味で久米くんのことを疑ってるんでしょう?
雅にちょっかい掛けてるって思ってるんでしょ?”
この文面を見て、まこが「ああ、そう言えば!」と声を上げ、ぽんと手を打った。
僕はもはや何が何だかわからず、ぼんやりとした目でまこを見上げた。
「あいつ……鬼頭はしきりに久米の右手を気にしてた。
何でそんなこと気にするのか、気になったが、あの場はあやふやに流されたんだっけ。
どうせあいつのことだから自分で解決するだろうって思ってさ」
「右手……」
僕は自分の右手を開いて、表に向けたり裏に向けたりして視線を落とした。
そして再びディスプレイに視線を移す。
“久米くんは犯人じゃない。
あたしも犯人のことはよく知らないけど、これだけは確実だから”
楠が何故久米を犯人じゃないと言い切るのか分からなかったが、単なる憶測や推測でこんな重大なことを言う子じゃない。
そんなことを考えていると、まこは僕とは違ったことを考えていたのか椅子を引き寄せて座り、僕を覗き込んできた。
「鬼頭は久米の右手に傷跡があることに、食いついてきたんだ。
傷の治り具合から見て、過去一年以上経ってる」
一年以上……
「それで雅は久米を当時の男子中学生かもと思ってるのか…
あ、でも楠の手紙にはストーカーの犯人も手に怪我を負ってるって」
雅を庇った男子中学生。
雅を傷つけようとしたストーカーの犯人。
―――二人は同じ場所に怪我を負っている。