HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~


楠からのメッセージはまだ続いた。


“雅は久米くんをストーカーかもしれないって疑ってる。


先生も、ストーカーとは違った意味で久米くんのことを疑ってるんでしょう?


雅にちょっかい掛けてるって思ってるんでしょ?”


この文面を見て、まこが「ああ、そう言えば!」と声を上げ、ぽんと手を打った。


僕はもはや何が何だかわからず、ぼんやりとした目でまこを見上げた。


「あいつ……鬼頭はしきりに久米の右手を気にしてた。


何でそんなこと気にするのか、気になったが、あの場はあやふやに流されたんだっけ。


どうせあいつのことだから自分で解決するだろうって思ってさ」


「右手……」


僕は自分の右手を開いて、表に向けたり裏に向けたりして視線を落とした。



そして再びディスプレイに視線を移す。





“久米くんは犯人じゃない。



あたしも犯人のことはよく知らないけど、これだけは確実だから”




楠が何故久米を犯人じゃないと言い切るのか分からなかったが、単なる憶測や推測でこんな重大なことを言う子じゃない。


そんなことを考えていると、まこは僕とは違ったことを考えていたのか椅子を引き寄せて座り、僕を覗き込んできた。


「鬼頭は久米の右手に傷跡があることに、食いついてきたんだ。


傷の治り具合から見て、過去一年以上経ってる」


一年以上……


「それで雅は久米を当時の男子中学生かもと思ってるのか…


あ、でも楠の手紙にはストーカーの犯人も手に怪我を負ってるって」





雅を庇った男子中学生。


雅を傷つけようとしたストーカーの犯人。




―――二人は同じ場所に怪我を負っている。





< 307 / 841 >

この作品をシェア

pagetop