HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
美術バカはまるで宇宙人と遭遇したかのように、しばらく固まっていたけど、
やがて、ゆっくりとまばたきをするとまたも探るように目だけを上げた。
「ぼ…ぼくのことからかってるの?」
「からかってなんかない。あたしはそんな暇ないし、そもそもそんな無駄なことしない」
「暇…無駄……」
美術バカは口の中でブツブツ唱え、それでも
「えっと……」と鼻の頭を指で僅かに掻いた。
「好きな人でも居るの?」
「…………」
あたしの質問に美術バカは黙り込んだ。顔を赤らめて俯くその顔に、
言わなくてもその反応見たら分かるよ。とあたしも思わず心の中で苦笑い。
「告白しないの?」
またも聞いてみた。良く考えたら、こいつとこんな話するのはじめてかも。
いつも、もっぱら美術の話だし、あたしから話題を振ったこともあんまりないし。
って言うかやっぱり違和感。こいつも生身の女を好きになるんだなって。
美術バカは口を噤んだ。
酷くバツが悪そうに顔を逸らし、床の辺りに視線を彷徨わせている。
「言いたくなきゃいいや。まあ、あんたをフる女なんて居ないでしょ。だってモテモテだもんね」
嫌味じゃなく本気で言って、あたしは手に一枚の手紙を掲げた。
「こんなラブレターなんてもらっちゃってさ」
さっき美術バカの鞄の中からちょっと飛び出ていた白い封筒が目について、取り上げたのだ。
さすがに中は見てないけど。
宛名も差出人も封筒には書かれていないけど赤い薔薇の花のシールで封がしてあって、いかにも女の子から貰ったラブレターって感じだった。