HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「ち、違うよ!それは!!」
美術バカが驚いて、あたしの手から封筒を奪った。
「何必死になってんのよ。それともこれから出す予定?」
「違うよ」
美術バカは真剣に言って、その手紙を乱暴な仕草で鞄に仕舞い入れた。
何だってのよ。そこまで怒ることないじゃん。
とちょっと思ったケド、あたしもからかって悪ふざけしたのは良くないかも。
「ごめん。ちょっとふざけただけ」
肩をすくめて美術バカを見ると、美術バカは、
「ううん。ぼくも悪かったよ。ごめんね」と小さく謝ってきた。
あたしは人と付き合うのが苦手。
何でもストレートに口に出るし、優しい言葉を言えない。思いやりとか優しさとか、分かんなくて、いつも他人を傷つける。
だけどあれこれ考えて言葉を出すのは疲れるし、正直面倒くさい。
だからあたしには親しい友達がいないのだ。
でもそれは全然苦じゃなかった。
誰かに分かってほしいと思わなかったし、逆にあたしの内側に深く入って欲しくなかったから。
でも―――こいつなら、自分の全部を出せる。
出してもこいつは機嫌を悪くしないし(たまに怒るけど)、あたしが喋らなくても自分から色々喋ってくれる。
気を遣ってくれてるのとは別に、こいつはいつもあたしの前で素直でいてくれた気がする。
こいつならあたしの“はじめて”をあげてもいいかも。
そんな風に思った。
「ねぇ、する?」
あたしはもう一度聞いた。