HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
美術バカは今度は驚いたりもせず、僅かに顔を赤くすると、
「何でこのタイミングで言い出すかな。しかもどうしてこの流れでそうなるの」
と頭を掻いた。
「したくなきゃいいけど。
あたしはしてみたいって思ったから言っただけ」
口がへの字に曲がったのが分かった。
あたしだってこれでも一応恥ずかしいって言う感情はあるんだよ。
「鬼頭さんは……ぼくのこと好き―――なの?」
逆にそう聞かれて、あたしはちょっと首を捻った。
好き。
って言う感情がどうゆうものかあたしには分からなかった。
大好きな“あゆ”の曲は恋愛の歌が多かったけど、あたしには彼女の歌う激しい恋情と言うものが分からなかった。
でも何故か恋愛の歌が好きで、あたしはよく聞いていた。
結局出した答えは―――……
「人間としては好き」
あたしの答えに美術バカはちょっと苦笑いを漏らして、椅子をずらすとあたしの真向かいから覗き込んできた。
「……それでもいいか」
覗き込んできた顔は赤くなっていて、長い睫を伏せるとあたしの両手をおずおずと取った。
ぎこちない手付きだったけど、その手が温かくて―――
緊張と言うよりも、何故か安心感を覚えた。