HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
美術バカの顔がゆっくりと近づいてくる。
キスのときって目を閉じた方がいいのかな。漫画やドラマとかではみんな女の子はそうしてるけど。
でもどのタイミングで?
色々考えていると、美術バカが目を細めてあたしの顔に近づいてきた。僅かに顔を傾けて、
こいつ未経験だって言ったよね。なのに、自然じゃん。
なんて的外れなことを思ってみたり。
美術バカの睫があたしの瞼をかすめて、くすぐったい。
唇と唇が触れ合う瞬間だった。
「やっぱだめだ」
ぐいっ
急に美術バカに引き離されて、あたしの方が面食らった。
「何で?」
「いや……あの…」
「あたしじゃ欲情しない?」
「よっ!…欲…!」
美術バカが顔を真っ赤にして、口を押さえる。
「ち、違うよ!そうじゃなくて」
慌てて手を振る美術バカ。こっちが心配になるぐらいその顔は赤く染まっていた。
「大丈夫?あんた熱あるんじゃない?」
「ち、違うよ!」
またもさっきと同じ反応で否定すると、
「ドキドキし過ぎてどうにかなりそうだから……
―――ぼくは、鬼頭さんが好きなんだ。
だから鬼頭さんとはしたいけど、だけど鬼頭さんがぼくのことを好きになってくれて、二人の気持ちが通じ合えば、
もっといいかなって」
美術バカの告白は、広い美術室に吸い込まれるような弱々しい声だったけど、
あたしの耳にははっきりと届いた。