HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
思い出そうとすると、またも頭が鳴り、脳が締め付けられるような頭痛を覚える。
何故阻む―――
何故、拒む―――
痛みが引いていくまであたしは、その場を動けないでいた。
その後、断続的な頭痛はしばらくの間引いたり襲ったりの繰り返しだったけれど、あたしが美術バカのことを考えないようにすると、何事もなかったかのように元通りになった。
まだぼんやりと重い気がしたけど、起き上がってケータイで時間を確認すると夜中の三時。
ベッドに入ってまだ二時間ほどしか経ってない。
ほとんど習慣になっているメールのチェックもしたけど、ストーカーの野郎からはメールが届いていなかった。
思いも寄らない大きなため息が口から出て、あたしは額を押さえた。
もう一度眠ろうかと思ったけど、眠れそうにもない。
諦めてあたしはベッドから降りた。
階下に降りていくと、キッチンから物音が聞こえてくる。
一階部分は一晩中明かりをつけたままにしてある。普段なら消して就寝するけど、このところずっとそうしている。
ストーカーの野郎が忍び込んだのかと思って身を硬くしたけど、中から聞こえてきたのは、
明良兄の声だった。乃亜の声もする。二人はひそひそと声を押し殺していて何事か喋っていた。
いざってときのために、勝手口の鍵を乃亜に渡してあるから二人はそれで入ったんだろう。
「右門 篤史に会ったって?」
「うん。雅が絶対久米くんと繋がりがあるって」
「また危険なことしやがって」
と明良兄がため息をついているのが分かる。その瞬間、ふわりと何かが匂ってきた。
キッチンからわずかに匂ってくるのはタバコの匂いだ。換気扇を回す音も聞こえる。
明良兄がタバコを吸っているのだろう。
「ねぇやっぱり警察行った方がいいんじゃない?このままじゃ危険すぎるよ」
乃亜が心配そうに呟いて、
「だけど、あいつが俺たちの説得に応じると思うか?あいつは一度決めたら絶対にやりぬくヤツだよ。
お前だって分かってんだろ?」
明良兄が呆れたように返している。
「Exactly.(その通り)」
あたしは開いたキッチンの扉を軽くノックすると二人の前に姿を現した。