HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
その晩は、結局眠ることなく乃亜と明良兄とトランプなんかして夜を過ごした。
ババ抜きからはじまってポーカー、七並べ、神経衰弱。
明良兄はあたしたち姉妹にずっと負けっぱなし。それが可笑しくて、あたしたちは笑いながらからかい、その声がリビングから途絶えることはなかった。
朝―――
あたしと乃亜は揃って欠伸を漏らしながら一緒に家を出た。
家を出たところで、近所のおばさん数人が家の塀の前で固まってお喋りしている。
みんな一様に困惑した表情を浮かべ、何事か喋りこんでいた。
あたしを見つけると、おばさんたちはちょっと動揺したようにあたしに駆け寄ってきた。
「雅ちゃん。これ、あんたのとこのゴミでしょ?誰の仕業かしら。荒らされてたわよ」
おばさんたちは足元に散らばった可燃ゴミ袋を見下ろした。
その可燃ごみ袋はカラスや猫が狙ったものだとは明らかに思えなかった。
そもそもカラスや猫避けのネットが被せてあったのだ。
そのゴミ袋は明らかに鋭利な刃物で切り裂かれた痕が残っていた。可燃ごみの袋の中は荒らされ、昨日の晩に詰め込んだ量より明らかに減っている。
何者かが持ち帰ったのが明らかだった。
「やだ!嘘!!」
乃亜が両手に口をあて、顔色を青くして一歩後ずさる。
あたしはゴミ袋の下に屈みこんだ。
破った紙切れが袋の切れ目からちょっと飛び出ていて、あたしはその端っこを慎重な手付きで持ち、拾い上げた。
昨日の晩にピックアップした雑誌。カフェの紹介がされていて、その一部だった。
罠にかかった。
あたしはその紙切れを眺め、少しだけ笑んだ。