HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~



―――学校に着いて教室に向うと、すでに久米の姿はあった。


「おはよう、鬼頭さん」


相変わらず爽やかな……でもどこか似非くさい笑顔であたしに挨拶してくる。


昨日の今日だからか、乃亜はさすがに久米のことを警戒したようにあたしの背後に隠れるように身を潜めていた。


予鈴がなり、水月がちょっと緊張した面持ちで現れると、いつものホームルームがはじまる。


教壇に立つ水月の姿をじっと見つめて、彼に名前を呼ばれるのをドキドキした心境で待つ。


「鬼頭」


水月が出欠簿を眺めて、顔を上げるとあたしと視線が合った。


ただ―――


名前を呼ばれただけなのに、心が躍って、どうしようもなく嬉しくなる。


二年前に分からなかった“あゆ”の切ない恋の歌の意味も、彼と一緒に聞くと共感できるし、


意味も理解できる。


顔を見るだけで、声を聞くだけで―――不整脈を起こしそうだ。



同じものを見て感動して、同じものを食べて笑いあって、手を繋いで同じ夢を見る―――





手を重ねたいのも、体温を分かち合いたいのも―――



全部水月がいい。



水月じゃないとダメなの。










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