HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~



久米の方に顔を向けて、今度はじっとその横顔を見据える。


この久米が―――あの美術バカ……?


分からない。


身長だってあたしと並ぶぐらいしかなかったのに、今久米とは20cm以上の差がある。声だってあの柔らかくて優しいものとは違った。


まぁ男子ってのは急に成長したりするしね。


だけど―――


ふいに久米がこっちを振り向いて、僅かに口角を上げた。


不敵に浮かぶその笑顔が、あの美術バカのふわふわした優しい笑顔と同じだとは到底思えない。


「何?そんなにじっと見つめられると、困っちゃうな。


もしかして俺と付き合う気になった?」


ついでに言うとこんなに図々しくもなかった。


「なってない。ってか、これからもならない」


跳ね除けるように言って前を向くと、Miss ロスが楽しそうに今日の授業の趣旨を説明している最中だった。


Miss ロスの授業は、いつも教室の中で近くの席同士グループを作って、一つの議題について英語で会話をするとかそうゆう授業が多かった。


英語の授業とは違って、こっちは実線用の英会話を勉強するわけだから、そこまで堅苦しくない。


人とコミュニケーションを取るのが苦手なあたしだけど、今は乃亜や梶が近くに居るからこの授業は案外楽だったり。


だけど今日は少しだけ様子が違った。


「OK♪今日は、隣のヒトと会話しましょ~♪議題は特にありません。思ってるコト、流行っているコト、二人で会話と繋げてLet's enjoy♪♪」


Let's enjoy♪


って……


隣、久米じゃん。


全然楽しめないんですけど!




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