HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
Miss ロスが楽しそうに手を叩いて、教室中が椅子を鳴らしたりして僅かに移動し始める。
「鬼頭……」
前の席で梶が心配そうに振り返り、あたしは苦笑いを返して手を僅かに上げた。
「…雅、梶くんに代わってもらったら?」
と、乃亜も眉を寄せて心配そうに顔を曇らせていた。
「大丈夫だよ。相手を取り替えたりしたら、Missロスに何か言われるでしょ?」
怒られはしないだろうけど、何で代わったのかは聞かれるだろう。
それを説明するのも面倒だ。
あたしは、意味深に笑いながら頬杖を突いている久米に体を向けた。
ちなみにこの授業での会話はレポートにまとめて、後で提出するようになっている。
Miss ロスのRossは、Loss(ロス:無駄に費やすこと)だな。面倒。
苛々した面持ちでシャーロット先生をちょっと睨むと、彼女はあたしの怒りがまるで通じていないのか、にこにこ笑顔を返してきた。
諦めてあたしは久米に顔を向ける。
「What do you think we should do first?(何からお話しようか?)」
久米は口元を曲げると、嫌みったらしく笑ってきた。
こいつ……悔しいけど、英語の発音とか何気に上手じゃない。
何だか嘲笑されているようで、あたしはムカっ腹が立った。
「There is nothing to tell you.(あんたに話すことなんて何もない)」
そう言ってやると、久米は軽く肩をすくめた。
あたしはもう一度念を押すように、久米を睨みつけた。
「Nothing.(何もね)」