HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~


そういう嫌がらせ?みたいなのは小学生の低学年からあった。


このあたしでも最初はちょっと落ち込んだりしたし、悲しかったけど、


すぐに悲しいと言う感情は薄れていった。


悲しんでる暇や落ち込んでる暇があるのなら、数式の一つを覚えた方が為になるし、楽しかったから。


昔から、あたしは女の子の流行の話や男の子の噂話より


お父さんが大学で教えている授業の内容を聞くのが好きだった。


変わり者だと噂されても、分かってくれる乃亜姉や明良兄が居れば、充分だったし。


そのうち嫌がらせや陰湿ないじめに対抗するすべを身に付けた。





―――それに一年の頃は、水月にどう復讐するか、そして彼に抱いたわけも分からない感情に振り回されながらも一生懸命で、




嫌がらせを一々気にしている暇などなかったのだ。



岩田さんは長い話を詰まりながらもゆっくりと確かめるように口に出した。


あたしはそれを黙って聞いていた。






「かっこつけてる、スカしてるって最初思ったケド、考えたら一人って結構辛い。


一年の頃仲良いグループから、あたしいっとき仲間はずれにされてたんだ。


特にこれと言った理由はなかったし、すぐにそれは終わったけど、


あの時は本当に辛くて、学校へ行くのもイヤだった。


それ以来、あたしは友達が近くに居ないと不安だし、遊びなんかに誘われないと一人だけ仲間はずれにされた気がして不安になる。


流行のことを知らないと置いてきぼりになるし、みんなが好きなものを好きと言わないと変わった子扱いされそう。


集団に群れてないと怖い。他人と“違う”と怖い。


臆病なんだよ、あたし。





だから鬼頭さんの周りからどう思われようと、我が道を行く、信念を曲げない。


そんな強いところが気になってた。






だから成績を上げることを条件に先生たちを利用する人には見えない」





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