HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
何―――……?
見た目と同じだけ暑苦しい体温が手のひらから伝わってきて、あたしは顔をしかめた。
水月の細くてきれいな手とは全然造りが違う太い関節。保健医のさらりとした感触とは違う、ねっとりと暑苦しい感触。
訝しげに少しだけ睨むように目をあげると、
「鬼頭は他の教科は優秀なのに、体育は平均点だな」
先生が少しだけ含み笑いをする。
「それが何か。誰だって苦手なものぐらいありますよ。出席日数は充分足りてるでしょう?」
こう見えても授業は真面目に出席している。
授業態度は真面目とはいいがたいけど。
「体育の授業も成績アップしたくないか?」
先生があたしの手をぐっと力強く握ってきて、今度こそあたしは先生が何を言いたいのか分かった。
手のひらから伝わる熱に嫌悪感を抱いて吐きそうなほど気持ち悪い。
「結構です。平均あれば充分ですので」
そっけなく言い、手を払おうとしたが、少し乱暴と言える仕草で先生は力強くあたしの手を握ってきた。
「そんなこと言うなよ。どうせ他の教科の先生にもやってることだろう」
あたしは目を開いた。
バカじゃないの。
「ふざけんな。
あたしはそんな安い女じゃない!」
あたしは思い切り手を振り払い、まさかあたしがそう言い出すと思ってなかった教師は一瞬たいろいだように手を放した。
その隙をついて、体育教師の股間目掛けて脚を振り上げた。
「その暴れ馬を一生使いものにならなくしてやるよ!」
中段の前蹴り(空手の技です)の要領で脚を突き出すと、目的の場所ではなかったが、教師の右足に命中させることができた。