HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「ってーーー!!!!」
脚とは言え、結構な威力で命中できたと思う。
教師は足を押さえてその場にうずくまった。
「舐めんなよ」
持久力はないけど、こう見えて瞬発力はあるんだ。
吐き捨てるように言って体育教師を見下ろし、あたしは逃げるように踵を返した。
いくらあたしが空手の経験者だからと言っても、もう何年もやってないし、第一体格では適わない。
逃げ出すあたしの脚を乱暴に体育教師が掴み、あたしは危うく転びそうになった。
「舐めた真似しやがって」
体格も力もあたしの比にならない体育教師にはやっぱり一撃だけでは足りなかったようだ。
体育教師は歯軋りをしながら、目を血走らせてあたしの肩を乱暴に掴む。
「離せ!」
喚きながら、素早くあたりを見渡してあたしの額に嫌な汗が浮かんだ。
球技場は体育館の三分の一の広さ。
だけどあたしが幾ら大声を上げたって、この締め切った部屋から声が洩れることはないだろう。
「お高く留まりやがって!神代先生や林先生は相手をするって言うのに俺はダメってことか!?
どいつもこいつも!」
は!?何言ってんの!
ってか水月は彼氏で、保健医とは何でもないし!!
ってか『どいつもこいつも』って誰と比べてんだよ!
―――こいつヤバい。
掴まれた肩が痛い。
あたしなんかと比べようもないほどの力で、その場に押し倒される。
フローリングの床に思い切り背をぶつけてあたしは悲鳴を上げた。