HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「……先生?大丈夫ですか?」
婦警さんが怪訝そうに聞いてきて、僕は振り向きもせずに
「大丈夫です」
何とか答えた。
みんなが僕を見て『大丈夫か?』と聞いてくる。
僕は―――どんな酷い状態なんだろう。
建物から駐車場の車まで結構距離があった。
走って車まで戻ったけど、やっぱり雨に濡れた。
雨に濡れて重くなった上着を脱いで、後部座席に乱暴に放り投げる。
バサッ
音がして、その近くに真愛ちゃんから預かったスケッチブックが置かれていたことに気付いた。
何となくスケッチブックを手繰り寄せ、ぺらぺらとめくる。
小一時間前―――
僕は雅が警察署に居ることを知り、血の気が失せる想いをした。
貧血なんてなったことがないから分からないけど、足元から崩れ落ちていくような感覚で視界がふらりと傾いた。
「おい!大丈夫かよ!!」
まこが慌てて僕を支え、
「先生、大丈夫ですか!?」と真愛ちゃんも心配そうに眉を寄せた。
僕は何とか頷いた。
「水月、車のキー貸せ。俺が運転していく」
「え…でも……」
「ごちゃごちゃ言ってる場合じゃねぇだろ。それに鬼頭は警察に居るっていってた。怪我したりしてたら病院だ。
あいつは大丈夫だ」
まこが力強く僕の両肩を握り、僕は大きく頷いて車のキーをまこに手渡した。