HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「……あー…あはは…」
何て答えればいいのか分からず、曖昧に笑って僕は自分の額を押さえた。
「…いや、大丈夫…」
「全然大丈夫じゃないじゃん」
俯きながら、口の中の唾を必死に飲み込む。
そうじゃないと、今にも嗚咽が漏れそうだったから。
こんな―――ほとんど接点がないし、第一相手は僕よりも7歳も歳下の、まだ少女と言っていい年代の女の子だ。
かっこわるいし、彼女だってどう対処すればいいのか困るじゃないか。
それでも
「先生はあたしが辛いとき、困ってるとき、いつも助けてくれた」
結ちゃんの手が伸びてきて、僕の指先にそっと触れた。
温かい指先だった。
「泣きたくなんかないのに、先生の前で泣いてすっきりした。先生に救われたんだよ。
だから今度はあたしが先生を救う番。
大丈夫。
悲しいことは涙がさらってくれるよ」
結ちゃんが僕の指先をぎゅっと握り、僕は彼女の指を握り返した。
泣きたくなんかないのに―――…
涙が出てくる。
僕は懸命に結ちゃんの指先を握り返し、それでも泣き顔をやっぱり彼女に見られたくなくて―――
片手で顔を覆ったまま顔を伏せて、涙を零した。
結ちゃんは黙って僕の手を握ってくれていた。
それが今の僕にとって
―――救いだった。